- Kaz Hattori
カッコと引用符の違い(笑)

文章を書く時、強調したい部分を目立たせるために「 」(かぎカッコ)を使うことがあると思います。日本語の文章は文字と文字の間にスペースを空けないで書くので、必要以上に読点を使わず、一定の調子を保ったまま、かつ、言いたいことを目立たせるために、「 」は非常に便利です。(このブログでもよく使います。)
また、「 」はもちろん、会話などで発言された言葉を表す時にも使われます。これらの2つの用法があることは、既にみなさんご存じのことでしょう。
さて、英語ではどうなのでしょうか。
英語圏では「 」は使いませんが、会話や発言を表す「 」と同じように使える記号として、 " " があります。quotation marks(引用符)ですね。文字通り、発言された言葉を引用する時に使われるものです。
では、会話や発言を表現する時に日本語の「 」と同じように使える、とのことなので、日本語の「 」と同じように、強調したい部分を目立たせるためにも使えるのでしょうか。
結論から言うと、使えません。
そして、ここを勘違いしているせいで、思いっきり変な英文になってしまっているケースが、日本には本当にびっくりするぐらいたくさんあるのです。
ちなみに通常、英語でのライティングでは、強調したい部分には記号を使わず、太字やイタリック、アンダーラインで表現します。インフォーマルなごく限られた場面では、文字をすべて大文字で書くこともありますが、大文字を使うことでまた別の意味が加わるので、一般的というほどではありません。(大文字の使い方については、またいずれここで書きます。)
引用符 " " は、前述のように会話や発言を引用する時に使う記号なので、その使い方としてはご存じの方ももちろん多いでしょう。日本語の「 」と同じものとして解釈していることと思います。
しかし、ここからが重要な点なのですが、この " " には、皮肉や自虐を込めて表現する、という役割もあるのです。
つまり、意味ありげな内容を伝えたい時や、その言葉の後ろには隠れた意味があるよ、ということを伝える時に使われる記号なのです。実際のネイティブの会話でも、両手の人差し指と中指を折り曲げて顔の高さに掲げるair quotesというジェスチャーとしてよく使われています。
ところが、日本の企業の英語版ホームページを見ていると、この " " と「 」を誤ってまったく同じものとして捉えてしまい、強調させたい部分に " " が使われているケースが、本当に本当にたくさんあるのです。
下記に、その誤った使われ方の例を挙げてみます。
・If you need "useful and helpful advice", feel free to contact us.
・We use "natural" ingredients.
・We offer a "diverse" work environment.
日本語の文では「本当にためになるアドバイス」「天然由来」「多様性」のように、強調したい部分に「 」を使うことができますが、これをそのまま英語に当てはめ、同じように強調させようとして " " を使うと、ネイティブには下記のように見えてしまいます。
・本当にためになるアドバイス(笑)をご希望の場合は、ぜひご連絡ください。
・私たちは天然由来(笑)の素材を使用しています。
・弊社オフィスは多様性のある(笑)職場環境です。
これでは本来の意図がまったく伝わりませんし、こんなことをホームページに書く会社はありませんよね。ビジネスの場であるホームページで、あってはならないことです。
このように " " が誤って使われるケースはあまりにも多いので、日本人の英語学習者の中にも、それが正しいと思い込んでいる人が相当数いるのではないでしょうか。
日本語のわかるネイティブが相手ならば、「 」と同じ使い方をしていることがわかってもらえるかも知れませんが、日本のことをよく知らないネイティブに対しては、そうはいきません。先日もブログで書いたことですが、日本語の感覚のままで英語を書こうとすることは、誤解や間違いの元です。日本人にとっての常識は、海外の人にとっての常識ではありませんし、日本でみんなそうしているからと言っても、それが正しいとは限りません。
引用符に限らず、日本の学校の授業ではきちんと教わらないものは、他にもたくさんあるはずです。グローバライズコンサルティング合同会社では、英語ネイティブで日本語とのバイリンガルでもあるプロのコンサルタントが、英語圏での実際の感覚や、文化・習慣の違いを踏まえて、海外事業やローカライズに関するさまざまなサポートを提供しています。お気軽にお問い合わせください。