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  • Kaz Hattori

オリンピックとワクチン接種



東京オリンピック・パラリンピック開催の是非をめぐってはさまざまな議論がなされていますが、コロナウィルス対策との関連では、ワクチン接種の進捗状況との兼ね合いが注目されています。特に日本では、欧米と比べるとワクチン接種の進捗が大きく遅れていることもたびたび指摘されており、国民感情への理解の無さを問題視する意見も多く見受けられます。


下記は東京23区のワクチン接種の準備状況について報じている2月のニュースですが、どの区でも、医療従事者の確保と、ワクチンの供給についての不安を挙げています。


https://www.nhk.or.jp/shutoken/newsup/20210226d.html


一方、東京オリンピック・パラリンピックの大会組織委員会では開催期間中(29日間)に1日あたり230人の医師を必要としていることが、下記で報じられています。


https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210521/k10013044961000.html


開催期間中に230人の医師が必要という点に注目してみましょう。千代田区の情報を元に、1会場に2人の医師を配置することを基準として、115のワクチン接種会場を設置、1会場で1日に50回の接種が可能であると試算してみると、1日あたり5750回が可能となります。オリンピック・パラリンピック開催期間は合わせて29日間なので、5750回×29日=166,750回となり、16万回以上もの接種を終えられる計算になります。これは1日の接種回数を50回、医師1人あたりの担当回数を25回と仮定した数なので、実際にはもっと多く、この2倍以上の接種も可能でしょう。あくまで計算上での話ですが、期間中だけで少なくとも20~30万回の接種が、この230人の医師の手で可能となり得るのです。


こうして少し考えてみただけでもワクチン接種をこれだけ進められる可能性があるのですが、政府ではあくまで開催にこだわっていて、結果としてワクチン接種が進まないという点については、まったく考慮されていません。


当然ですが、医師や病院は、すべてがコロナウィルス対策に対応できるわけではありません。コロナウィルス以外の患者に対する通常の診療業務も抱えています。本日から始まった大規模接種会場においても、医師資格を持つ自衛官が接種を実施しなくてはならないほど、医療従事者が足りていないのです。


開催期間中、選手や関係者へのPCR検査は1日あたり5~6万回を想定しているとも報じられていますが、国内のコロナウィルス感染者が減らない今の状況では、ワクチン接種は国民全員の共通の利益です。国民の利益を無視してまで開催するオリンピック・パラリンピックに、どんな意義があると言うのでしょうか。



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